真実と孤立

（アジャシャンティのサットサンより）

私が子供の頃

10歳前後だったと思いますが



「大人たちは正気ではない」 と



確信したことがありました。

見抜いたとも言えるでしょうね。




そう見抜いたおかげで

すべてが腑に落ちたのです。






子供というものは

たとえ 両親や身近な大人たちが聡明で

恵まれた環境で育っているとしても




大人たちのやっていることを見て

「なぜ あんなことするんだろう？」

「なぜ そんなこと言うんだろう？」などと

不思議に思うものですよね。







そして ほとんどの子供は




「大人たちの考え方が正しくて

　自分が未熟なのだ」



と思い込んでしまいます。







オカシイのは大人たちの方だと

見抜いていた私はラッキーでした。






だからといって

大人たちが悪いとか怖いとか

否定的に見ていたわけではないんですよ。

ただ「正気ではないのだ」と理解していただけです。





その確信は

一度も揺るいだことがありません








やがて自分も大人になって社会の中で

正気ではない生き方をしばらく体験してみて

「こんな感じなのか」と分かったわけです。










大人たちの会話を聞いていると

何一つ本当のことを話していないと

子供の頃 感じたことはありませんか？





自分の考えを言ったり

お互いの考え方について議論したり...





友達を夕食に招いたりしても

一晩中みんなでワイワイ話をしているけれど

まったく真実ではない、意味のない話ばかり。

単に おもしろいだけの話。

それはそれでいいんですけどね。









現実でも真実でもない

頭で創り上げた幻想ばかりを

話したり 信じていたり

何の問題もないことを悩んだりしていて





「大人たちは正気ではないのだ」と見抜くまでは

ひどく混乱したものです



「正気ではない」という言い方なのは

大人たちが　現実ではないことを

話しているだけではなく

それが現実だと

本気で信じていたからです。








私はそれまでは家中の会話を

まるで高性能の盗聴器のように漏れなく聞いていて



「なぜ あんなことを本気にして話しているんだろう？」と

ずいぶん混乱していたのですが


「ああ、大人たちは正気じゃないんだ」と気付いてからは

すべてが腑に落ちて

彼らの話を真剣に聞くこともなくなりました。






「大人たちは正気ではない」という確信は

その後もずっと疑う余地もなく





そして自分も大人になって

正気ではない社会の中で

周りと同じような言動をしているとき





いつも「これは正気ではない」という自覚があり

そのような言動が「まとも」などと錯覚することはなく

居心地よく感じたこともありませんでした。







「正気ではない」と分かっていながら

そんな言動をして 周りに合わせたりするのは

まったく居心地悪いものですよね


スピリチュアルの探求が始まったとき

そういう感覚になる人は多いのではないでしょうか。









その後しばらくして

いったい何が本当に真実なのか探求し始めたのです。


「何が本当に真実なのか」なんて

おかしな問いかけですよね。







そんな謎を探求し始めると

正気ではない思考や「私」の奥深くに入り込み

みなさんも同じような体験をしているでしょうが

真実の世界へ抜け出そうとすればするほど

ますます正気ではなくなるものです。









究極の真実を知りたい人に言っておきましょう。






真実は

いくつかの選択肢から選べるものではありません。







アイスクリーム屋さんに行くと

たくさんの種類の中から好きな味を選べるように





スピリチュアルの市場にもたくさんの教えがあって

「こんな場合はこのメソッドやテクニック」

というふうに

好きなものを選べるかのようになっていますよね。





しかし

真実はそんなふうに選べるものではないのです。






スピリチュアルの市場に溢れている選択肢は

ますます真実から離れていくものが多いんですよ。

ほとんど全部と言ってもいいくらいかもしれません。

おもしろいですね



なかなか真実を知ることができないのは

そのためです。








本当に真実を知るためには

「賛同されたい」とか

「仲間が欲しい」という思いは

捨てなくてはなりません。







どういう意味か分かりますか？







たとえば

ここにも多くの人が集まっていますよね。

それを見て

「自分と同じ考えの人がいっぱいいるのだ」と

安心したりするでしょう？


賛同や仲間を得ることで安心したいという欲求は

スピリチュアル探求の場でも

起こり得るんですよ。






似たような信念の人が集結して

幻想に身を寄せ合って安心するんですね









でも

「同じ考えの人を見つけると安心」という思いは

幻想へ引き込まれる要因になってしまいます。







そのような幻想から完全に解放されることが

本当の自由なんですよ。









幻想から本当に解放されると

同じ考えの人に出会うことで安心したり

「たくさんの人が信じているから真実だ」などと

思い込んだりしなくなります。







真実は

信じている人の多さなど全く無関係なのです。




そういう考え方自体が幻想なので

同じ考えの人がいるか？などと気にしていたら

真実にはなかなか近づけないんですよ。








真実を知るということは

孤立するということでもあります。






孤立は

スピリチュアリティーの象徴とも言えるでしょう。







真実の探求が孤立だというのは

おとぎ話の中でも象徴的に描かれていますよね。

深い森の中に迷い込んだり

人里離れた山奥の一軒家に訪ねて行ったり







ブッダも一人で菩提樹の下に

イエスも一人で砂漠に

ムハンマドやモーゼも一人で山の頂にいました。








これは 今いる場所を離れて

どこか遠くへ行くという意味ではないんですよ。




むしろ逆で

いまここの

本当の自分の場所に居るということです。








何が真実なのかを探るとき

もう決して

「外」の意見を参考にしないということです。








「外」というのは

自分の頭の中も含まれるんですよ。

思考は外から来るものなのです。

気付いていましたか？

私たちの頭に浮かぶことはすべて

外から何かを取り込んで創られているものなのです。







今こうして話されている言葉も

外からの借り物です。

自分自身の思考も言葉もすべて

外からの借り物を内在化したもの

と言えるのですよ。









ですから

本当に幻想から解放されたいのであれば




同じような信念の人たちで集まる心地よさも

手放すことです。







これはスピリチュアル探求の場でもよくありますし

宗教の場合は常に

同じ信念かどうかを基準に結束しているでしょう？






でも真実には

信念・信条など関係ないのです。

まったく無意味です。






信念によって覚醒する人など誰もいません。





真実へ向かうときは　信念など

何より先に捨て去らなければならないものですよ








孤立とは

そういう意味です。




人付き合いをしないとか

山奥にこもって一人になるとか

そういう意味ではないんですよ。







たとえ人付き合いをせず一人になったとしても

信念を持っていたり

誰かに教わった通りに瞑想していたりしたら

まったく無意味なことです。









周りに大勢の人がいても

たくさんの友達と交流しても

それは構わないのですよ。






真実に近づくにつれて

静けさの奥へ奥へと

深く深く入り込んでいく。



そういう意味の孤立なのです。







形式的に孤立するかどうかの問題ではなく

自分が創り上げているバーチャル・リアリティーから

抜け出すということなのです。










みなさん


今からほんの5秒くらい

頭をからっぽにしてみてください。













この5秒間に存在していなかったものは

すべて幻想なんですよ。


思考をストップしている間に消えているものは

現実でも真実でもないのです。







なのに多くの人にとっては

思考を止めている間は存在しないものが

人生のほとんど全てを占めているでしょう？







私は女だ男だとか

私は誰々の母親だ娘だとか

この話はよく分かるとか分からないとか

あれが好きとか苦手とか

私はなかなかいい人だとか....







ぜんぶ思考が創り上げている

バーチャル・リアリティーであり

おなじみの幻想です。

真実ではないのです。











このことを

本当に　よ～く　理解したら

大変な衝撃を受けますよ

人生最大のショックを受けるでしょう。









孤立するとは こういうことです。

社会から離れるとか 人付き合いをしないとか

そういう外面的なことではありません。

もっと深い　内面の　

観念からの孤立なのです。










静けさの中で

頭を空っぽにすると消えるもの

それはすべて幻想です。








「あの人はこういう人」とか

「自分や家族にこんなことが起こっている」とか

どんな考えも出来事も





思考を完全に止めると消えることは

ぜんぶ幻想なのです。

現実でも真実でもないのです。










思考が何の役にも立たなくて

真実との関連性が全く無いというわけではないんですよ。

まぁ、大体はそうですけどね






真実に近づくための道具にはなっても

思考そのものには真実はありませんから。









あなたが

世界がバーチャル・リアリティーだということに

ほんの少しでもピンとくれば





大多数の人が気付いていない真実の世界を

垣間見たということになります。






この真実に気付いた人は

人類史上ほとんどいません。




1日10時間の瞑想を何十年も続けている人でさえ

ほとんど分かっていないでしょう。



「世界は幻想だ」と知っているフリをしても

知識だけで終わっていて



よく効くツボを押されたように

「おお～幻想だった～」と

心底ピンと実感したことがある人は

ほとんどいないのです










ニュースを見聞きして感じることも幻想


周りの人が話していることも幻想


自分の思いや考えさえも幻想


一つとして真実が無い...









こう本当に気付いたら

孤立するでしょう？








幻想から完全に抜け出せば

調和しかなくなるんですけど

そこに辿り着くまでは






共感し合ったり

賛同し合ったりすることが

何も無くなるんですから。






エゴは孤立なんてしたくないでしょう。





エゴにとっては

幻想のほうが居心地が良いのです。

エゴは

世界が変わるのは構わないけれど

世界が壊されるのはイヤなのです









目覚めとか覚醒と呼ばれるものは

あなたの世界を破壊するプロセスなんですよ。

和合のプロセスだと思っていたら

それもまた幻想です。






壊して壊して

どんどん壊していく。





究極的には

ワンネスにたどり着くのですが

ワンネスは

和合や団結とは無関係なのです。











先日 聖書の中で素晴らしい章を見つけました。

聖書にはそんなに詳しくないので

正確には覚えていないのですが






父と息子を対立させ

母と娘を対立させ

兄弟と姉妹を対立させる。


イエスがそういうことを言っている場面です。






これは新約聖書の中でも

とても衝撃的な部分ではないでしょうか。

イエスが ある家族のもとにやってきて

「あなたたちを対立させる」と言うのですから。







イエスといえば

人々を癒したり　奇跡を起こしたり

優しい人というイメージを持たれていますよね。

それなのに この場面では

まるで別人のように凶暴なイメージなのです。









ここで語られていることは

家族を対立させたり

バラバラにすることが主旨なのではなく

はるかに深い大きな意味があるのですよ。





それは

人々が現実と信じている幻想を崩壊させること





常識的な世界観を

真っ逆さまにひっくり返して

人々を孤立へと導いているのです。





孤立して自分の内面に向き合ったとき初めて

本当の調和が生まれるんですね。





本当に素晴らしい表現です。

和合させるのではなく

引き裂いて破壊してしまう。






エゴには耐えられないでしょう

エゴは周りとうまく付き合いたいのです。

いい顔をして 優しくして 仲良くして

気持ちよく酔っていたい







スピリチュアリティーも宗教も

悪くはないんですよ。

真実を含んでいますからね。

でも

真実といっしょに

幻想もベッタリとくっついているんです




そして それが

絶対に譲れない信念になっていく。








よく論争の種になる2つの話題といえば何でしょうか？

そう、みなさんよくお分かりですね





宗教　と　政治。







宗教と政治の話になると

なぜ人は熱くなるのでしょうか

他の話題と何が違うのでしょうか。







観念や信念が とても根深いからですね。

非常に強く絡み付いている　大幻想だからです。







宗教やスピリチュアリティーは

真実に近いものだと思っていたかもしれませんが

かえって幻想に近いものが多いんですよ。





だから　

自分の信念と異なる考え方に出会うと

強く反応するのです。

エゴはカンカンになります

イエスが十字架にかけられたのもそのせいですね。

















すべての人の中に

すばらしい静けさがあるのです。




これは思考や感情を止めて得られるような

私たちが創り出す静けさのことではないのですよ。

それは本物の静けさではなく

エゴが安心するためのニセの静けさです。









本当の静けさは

思考が創り出す幻想を見抜いたとき

自然とそこにあるものなのです。







真実を知るためには

思考はまったくアテになりません。




新しい料理を試したり

人類を月へ送ったり

宇宙船を作ったり

そういう時は思考が大いに役立つんですよ。







しかし

究極の真実には　思考は無用なのです。




真実へ向かうときは

思考を捨て去ってください。




ここに来ているみなさんは

「そんなこと分かっている」と

思っているかもしれませんが


でも

思考が創っている幻想の世界を

実際に見抜いたとき　初めて

この意味を本当に理解できるでしょう








そのときはもう

思考を止めようとする必要さえなくなります。

どんな思考が浮かんでも

まったく真実ではないと分かっているので

どうでもよくなるのです。







そうなると

思考や感情があろうと無かろうと

常に　まっさらな本当の静けさが

そこにあるようになります。

言葉にすることも　知ることもできない

その静けさに自分を解き放ったとき

本当の目覚めが起こり

全てをありのままに見ることができるのです。








覚醒とは　

幻想の代わりに

現実をありのままに見ること。

それだけのことなんですよ。

そして

偽りの自分の代わりに

本当の自分に気付くこと。

それが最も重要なことでしょう。










思考していないときの世界とは

どんな世界でしょうか。







思考を使わないで答えを出してみてください







自分のことを考えていないとき

自分のことをどう思うでしょうか








分かりますか？



静けさの中にいると

幻想が見えてくるのです。

「あ、これは幻想だった」と

拾い上げることができるのです。

拾い上げて持っている価値もありませんね。

ポイっと捨てましょう










思考にも真実があるはずだと信じているうちは

静けさの中にいるのは難しいでしょう。





でも

思考に真実は無いのだと気付いたら

静けさの中にいるのは簡単になります。

だって

他のどこへ行っても幻想ばかりの行き止まりなのだから

静けさに落ち着くしかなくなるのです。








あなたは

自分が思っているような自分ではないし

自分が感じているような自分でもないんですよ。





「思考が真実ではないなら

　感じるものは真実だろう」というのも

よくある思い込みです。



思考も感情も　あなたではなく

あなたの中で起こっているものなんですよ。






そして「あなた」さえも

あなたの中で起こっているものなのです。

冗談みたいですよね。

あなたに関するすべては

あなたではなく

あなたの付属品みたいなものなのです。










そして　最大の幻想は





「私の外側に宇宙がある」

「私は世界の中にいる」



という思い込みです。








バーチャル・リアリティーを抜け出すと

それは間違った思い込みだったと

すぐに分かるんですよ。







まったく真逆で

宇宙も世界も「あなた」も

あなたの内側にあるのだということが

ハッキリと分かります。






どこを見ても

何を見ても聞いても触っても

すべてが自分の内側にあるということが

あまりにも明確で

なぜ今まで気付かなかったのかと

本当に驚くのです








そう気付くことで

人間らしさや人生を失ってしまうわけではなく

むしろ本当の意味で

人間らしく生きられるようになるのですよ。







それまでは

バーチャル・リアリティーを現実だと思い込み

偽りの私を自分だと思い込み

いまここにいると思い込んでいたわけですが





そんな世界がまったく現実ではなく

自分と思っていたものが自分ではなく

いまここにもいなかったのだと気付き





幻想を生きていた時の自分は

99％どこかへ行ってしまいます。





どこへ行ったのか分かりませんが

たぶん別の宇宙にいるでしょう